リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「牧野さんが、会社に出てくる時間に合わせてきたみたいです」

私が来たときには、もういたんですよね。
ようやく、明子は荷物を置いて自分の机を拭き、それから、小林の机も拭いた。

「お。ありがとさん」
「アレ、三度目、なんですか?」
「おう。ここに乗り込んで来るのはな」

含みのあるその言葉に、明子はマジマジと小林を見た。

「受付前に呼び出したり、常務のところに呼び出したりなら、両手じゃ数え切れねえよ」
「はあ」
「そういや、昨日、部長がなんか言ってたな」
「あー……。はい」
「父親じゃ頼りにならんと、朝っぱらから乗り込んできたのか」
「それにしても……、ここにこなくても」

常務のお部屋で、お話しされればいいじゃないですかと言う明子に、小林は出入り禁止になったんだよと笑った。

「は?」
「あの母親。そんな私用で毎回毎回ここを使うなと、常務に怒鳴られて。社長も専務も以下同文。上の階には、もう入れないみたいだぞ」
「そうなんですか?」

ひゃーっと言うように仰け反って驚く明子に、小林も困ったもんだよなあと疲れたように笑った。

「なにか、言われたか?」
「まあ、その。いろいろと……はい」
「気にすんなよ」
「気にはしませんけど」
「ど?」
「二人の仲を引き裂くなと言われまして。なんだかなあと」

明子の言葉を聞いて、なにを寝惚けたことを言ってるんだろうな、あの母親はと、小林は更に呆れ果てた声でぼやいた。
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