リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
あと三〇分ほどで、お昼になろうかという時間。
お茶でも淹れようかと席を立ち、その途中、幸恵のことを相談してみようと、野木がいるはずの喫煙室に明子は足を伸ばした。


-小杉さんも、よくやるよなあ。頭痛くなんねえのかな。


漏れ聞こえてきた会話に、自分の名前があったことに気づいた明子は、そのまま足を止めて会話に聞き入ってしまった。


-俺、頭痛くなってきましたよ。原田さんの声、聞きたくないですもん。もう。
-あいつに、考えろなんて言ってもなあ、ムダだって。俺はもう、構う気にもなれないよ。あいつ。
-小杉さんは、自分ができることなら他の人もできると、そんなふうに思っているとこがあるからなあ。できないやつは、できないのにな。
-いい加減、諦めてくれないかなあ。原田さんに考えろとか言うの。無駄なのに。
-まあな。迷惑だよな、あれ。いつまでもやられると。


こっちまで仕事する気力なくなるよ。
最後のその言葉は、川原の声だった。頭が痛いと言ったのは、岡島の声だ。


-まあ。本部長の目に留まるくらい優秀な人にゃ、できないヤツのことなんて、理解できねえのかもな。
-小杉さんは林田派かあ。なんか、女でそういうことに首を突っ込むのも、すげえよな。


すうっと、血の気が引いていくようだった。


‐さて、戻るか。


そんな声が聞こえて、明子は踵を返して給湯室へと向かった。
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