リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
朝のメールには、キレイな海の写真が添えられていた。
島野が常駐して作業している客先は、広島では内陸にあり海は見えないと言っていた。
休みの日でも出掛けて撮ったのだろうかと思いながら、明子は転写の中でその写真を眺め続けた。
朝日が昇る海は、黄色とオレンジが混ざり合ったような色で染まっていた。
海霧というのだろうか。
海面から立ち上る霧さえ、朝日の色に染まっていた。
初めて見たその景色に、明子はしばし、声もなく見とれていた。
そのメールに返信して、朝の挨拶と一緒に、牧野ともきちんと話しができたことを、明子は島野に報告した。
それから、数回、島野とメールのやりとりが続き、電車の中も、バスの中も、退屈しないですんだ。
美咲の母親の一件も、事件ですという件名とともに伝えたら、またやったんだという文面の後ろに、苦笑しているような人の顔の絵文字がつけられ、島野さんも呆れていますと、小林に報告したりしていた。


‐あのヤロウ。女にはホントにマメだな。
‐ぜったい女に教えねえって、その徹底ぷりも。ある意味、感心するわ。


明子のからの報告を聞きながらそんなことを言う小林に、昨夜「俺もメアドを教えろってんだ」と、そうぼやいていた牧野を思い出した明子は、教えてもいいでしょうかと島野にお伺いをたててみたところ、あっさりと、いいよという快諾の返事があり、ついでに、君島さんと小林さんにも教えておいてと頼まれた。
なんか、聞いている話と違うかも……と、そう感じた明子は、島野のメールアドレスに関して、こんな噂を聞いたんですけど、本当ですかと本人に尋ねてみたところ、そんなオチかと笑いたくなるような返信が島野からあった。
それを小林に伝えると、やはり小林もそういうオチかよと苦笑しながらも、明子が教えたメールアドレスを自分の携帯電話に登録していたようだった。
その様子を見ながら、牧野さんにも教えておいてくださいと頼んだら、自分で教えればいいだろうと笑われ、お互いメアドを知らないんですと正直に白状したら、小林はぽかんとした顔で呆れ笑い、お前さんに教えるなら牧野も怒らないだろうと、牧野の携帯電話のメールアドレスを明子に教えた。

始業時刻を過ぎてからは、そのメールのやりとりはピタリと止まったが、昨日は移動中の暇潰しにと送ってきていたに過ぎない。
朝から仕事をしている今日、そんなこまめにメールを送ってきていたら、それこそ問題だしねと、明子も納得していた。
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