リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「自分はもともと素行が悪いから、その手の噂話、多いんだよねって。あんがい、みんな信じてるだなあって、笑っていたわ」
「いや。だって、そう聞いたんですもん。だから、昨日、びっくりしちゃって」

昨日の木村と沼田の顔を思い出した明子は、二人を見て笑い転げた。

「そうか。昨日の驚きはそういうことか。二人とも、目、まん丸にしていたもんね」
「そうですよ。僕、島野係長が戻ってきたら、吠えまくってやるって決意しましたよ」

その言葉に、明子はさらにうふふと楽しそうに笑った。

「月曜にいろいろ話してるうちに、そう言えば、ケー番とか交換してなかったねって話しになって交換したら、メアドもあったよってだけの話しなの。今なら、メアド付きで交換できるわよ」

明子と木村の話しを聞いていた幸恵が、なに言ってんのよっと、突然、声を張り上げた。

「そんな作り話、よくすぐに考えられますね。小杉さんって、ホント、怖いわ」
「ねえ。毎晩毎晩、男をひっ掛け歩いてるんだ」

明子を睨みつけている幸恵や、品のない笑う声をあげる香里に、明子はやれやれと息を吐いた。いくら違うと言ったところで、明子の言葉を聞く気など微塵もないこの子たちを相手にしてもしょうがないと諦めた。

「沼田さん。だめです。こんな人と一緒にお仕事なんてしたら。なにをされるか、判りないですよ」
「今の仕事は、小杉主任の手を借りないと厳しいから。小杉主任は必要だよ」

ほとんど喋ることのなかった沼田が、幸恵の言葉にあっさりとそう答えて、否定した。

「こんな人、必要ないじゃないですか。こんな人のやってる仕事なんて、大したことないし。そんなの、私が」

やりますと続きそうだった幸恵の言葉を、珍しく沼田が厳しい声で制した。
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