リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
静かだけれど、沼田の怒りは幸恵や香里にも伝わったらしい。二人は慌てた様子で、沼田に対しての言い訳を口にし始めた。

「そんなの、ちょっとした冗談なんです」
「そうよ。そんなムキにならなくても」
「私、沼田さんのことだけは、ヘンなふうに言ったことないです」
「そうよ。ヘンのふうに言っていたのは、他の子たちだし」
「そんな言い訳、みっともないよ」

延々と続きそうな二人の言葉を、沼田はそう言って止めて、持ってきたパンを食べ始めた。

「そういうこと、二度としないでください。お弁当なんて持ってこられても困るし。受け取れないから」

幸恵と香里の手にある物を見ながら、沼田ははっきりとした口調でそう告げた。

「お弁当くらい、いいでしょう。食べてくれても」
「私、最近、料理教室に行ってるです」

沼田にそう言われても尚、まだ食い下がる香里と幸恵に対して「もう、いい加減してくれないかな」と言い、沼田は大きく息を吐き出した。
明子は既に食べる気力さえなくなり、ぼんやりと空を見つめていた。

「ホントに、迷惑だから。なにを考えているのかは知らないけど、結婚相手とか探しているなら、他を当たって。僕はそういうつもりないし。ホントに、迷惑なんだよ。そういうの」

会社で、仕事もしないでフラフラしている子、興味ないよ。
ばっさりと切り捨てるようにそう告げた沼田に、幸恵は「だったら」と、絞り出すような声で問いかけた。

「どういう子がいいんですか? ホントに、小杉さんみたいな人がいいんですか?」

こんな人のどこがいいのか判らないと幸恵は言い募り「沼田さん、騙されてるんですよ」と、必死の様子で言葉を続ける。
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