リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「また、調べ直せって言うのっ 何度、同じことやらせれば気が済むのよ。いい加減にしてよっ そういうこと、ちゃんと最初から教えてくれれば、そんな何度も調べ直すことないのにっ」
「お前がちゃんとやれば、小杉主任だって、そんなことを何度も言わなくてすむんだよ」

お前のせいだろと言う木村を、幸恵は「余計な口、挟まないでよ」と言いながら睨みつけた。
そのまま、言い争いを始め出しそうな二人の雰囲気に、明子は「これは、もういいから」と幸恵に告げた。
その言葉に、幸恵は目を瞬かせた。

「次の画面設計書に取り掛かって大丈夫よ。この設計書は、私が修正して検収済みにしておくから。昨日と今日とで、画面設計書の書き方は判ったわよね」

たくさん、聞きにきたんだから。
穏やかな声のまま明子にそう言われ、幸恵は木村に言いかけ始めていた言葉を途切れせて、目を泳がせた。
当然、またやり直しを命じられると思っていたその予想が外れて、何を言えばいいのか思いつかず、戸惑っていたようだった。

「聞こえた? この画面設計書は、検収済みにしておきますから、もう、大丈夫です。これで、画面設計書の書き方は判ったわよね。最初の一本でこれだけ時間かけてやったんだもの。これを踏まえて、次の仕事に取り掛かってください」
「だから、その次の仕事って」
「それは、タスク管理表で確認してください」
「ひどいっ そんなことも、ちゃんと指示してくれないなんてっ 」

また、明子を詰り始めた幸恵を見据えて、明子は言い聞かせた。

「原田さん。勘違いしないでね。これは、私の仕事じゃないのよ。あなたの仕事よ」

ゆっくりとした口調で告げられたその言葉に、幸恵は一瞬表情をなくし、それからすぐに怒りの表情を浮かばせた。
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