リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
『木村も連れて行くか』
「あのお客様相手じゃ、戦力になりませんよね? それに、万が一、潰されたら大損失ですよ? やっと一人でも動けるまでになったのに。他に人がいないなら、戦うためのアイテムください」
半分、自棄を起こしたようなふて腐れ気味の明子のその言葉に、牧野はけたけたと声をあげて笑い出した。
『戦ってこなくていい。話をしっかり、聞いてきてくれ』
「ホントに、二人だけなんですか? 私と沼田くんだけ?」
明子は額に手を当て天を仰いだ。
(ちょっと待って、それは、勘弁して)
明子のそんな心の叫びが聞こえたのか。
牧野が仕方ないというように、切り札を出した。
『月曜は告別式なんで無理だけどな。木曜の打ち合わせには、笹原(ささはら)部長も顔を出すと言ってくれている。月曜だけ、沼田と二人で参加してくれ。まあ、大人しいやつだけどな、防御壁くらいにはなってくれるだろ。今回が初めてってわけじゃないからな、あいつ。入社したころから、あそこの仕事はしているはずだ。沼田に確認したら、月曜は朝10時から打ち合わせなんで、8時過ぎには会社を出たいそうだ。悪いが、その時間に出てきてくれ』
牧野には聞こえないように、明子は息を吐き出した。
(とにかく、行くしかないわけね)
(でもさー、なんで?)
(なんで、あたしなのよぉーっ)
そう愚痴りそうになるのを堪えて「判りました」と、明子は覚悟を決めたような力強い声で答えた。
「とりあえず、君島課長が戻ってくるまで、ということですね?」
『そうだな』
「牧野課長、今、会社ですか?」
『ああ。呼び出された』
「今から行って、資料まとめて、それから、その土建会社のところの今までの議事録全部、目を通しておきたいんですけど。大丈夫ですか?」
係長以下の社員が休日出社する場合は、課長の許可を得て、ついでに課長にも出社してもらわなければならない。
基本、土日祝日は休日となっているため、当然のことながら会社は開いていない。
施錠されている裏口の鍵が持っているのは、課長以上の役職に付いている者に限られている。
なかには、休出するという社員に鍵を渡して出社してこない課長もいるが、牧野の場合、それはまずない。
よほどのことがない限り、都合をつけて出社するし、最後までそれに付き合う。
だから、牧野に休日出勤のお伺いを明子はたてた。
(議事録の内容くらいは、頭に叩き込んでいけるかなあ)
(でも、システムの概要設計とかまでは、無理だよねえ)
(とほほ)
そんなことを考えながら、明子は電車の時間を確認した。
「あのお客様相手じゃ、戦力になりませんよね? それに、万が一、潰されたら大損失ですよ? やっと一人でも動けるまでになったのに。他に人がいないなら、戦うためのアイテムください」
半分、自棄を起こしたようなふて腐れ気味の明子のその言葉に、牧野はけたけたと声をあげて笑い出した。
『戦ってこなくていい。話をしっかり、聞いてきてくれ』
「ホントに、二人だけなんですか? 私と沼田くんだけ?」
明子は額に手を当て天を仰いだ。
(ちょっと待って、それは、勘弁して)
明子のそんな心の叫びが聞こえたのか。
牧野が仕方ないというように、切り札を出した。
『月曜は告別式なんで無理だけどな。木曜の打ち合わせには、笹原(ささはら)部長も顔を出すと言ってくれている。月曜だけ、沼田と二人で参加してくれ。まあ、大人しいやつだけどな、防御壁くらいにはなってくれるだろ。今回が初めてってわけじゃないからな、あいつ。入社したころから、あそこの仕事はしているはずだ。沼田に確認したら、月曜は朝10時から打ち合わせなんで、8時過ぎには会社を出たいそうだ。悪いが、その時間に出てきてくれ』
牧野には聞こえないように、明子は息を吐き出した。
(とにかく、行くしかないわけね)
(でもさー、なんで?)
(なんで、あたしなのよぉーっ)
そう愚痴りそうになるのを堪えて「判りました」と、明子は覚悟を決めたような力強い声で答えた。
「とりあえず、君島課長が戻ってくるまで、ということですね?」
『そうだな』
「牧野課長、今、会社ですか?」
『ああ。呼び出された』
「今から行って、資料まとめて、それから、その土建会社のところの今までの議事録全部、目を通しておきたいんですけど。大丈夫ですか?」
係長以下の社員が休日出社する場合は、課長の許可を得て、ついでに課長にも出社してもらわなければならない。
基本、土日祝日は休日となっているため、当然のことながら会社は開いていない。
施錠されている裏口の鍵が持っているのは、課長以上の役職に付いている者に限られている。
なかには、休出するという社員に鍵を渡して出社してこない課長もいるが、牧野の場合、それはまずない。
よほどのことがない限り、都合をつけて出社するし、最後までそれに付き合う。
だから、牧野に休日出勤のお伺いを明子はたてた。
(議事録の内容くらいは、頭に叩き込んでいけるかなあ)
(でも、システムの概要設計とかまでは、無理だよねえ)
(とほほ)
そんなことを考えながら、明子は電車の時間を確認した。