リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「俺も部長も、昨日のお前の言葉は、お前が小杉主任の仕事を全部やるってつもりで言ったと、そう思ってるからな。そんなつもりなかったなんて、今さら言われても困るぞ。それこそ、勝手なことを言っているんじゃねえって話しだろ」

野木にまでそう言われてしまい、幸恵は困ったように坂下や香里たちを見回したが、坂下は「バカ、話しが違うじゃねえか」とぼやき、香里たちは状況を理解することもできずに、顔を見合わせているだけだった。
誰からも、幸恵を救う声も、庇う言葉もなかった。


(やっぱり、ね)
(自分が、なにを言ってるのかも、昨日は判っていなかったのね)
(とにかく、沼田くんと一緒にいられる状況にしたかっただけで)
(私の代わりに仕事をするなんて言ったのは、場当たり的な思いつき、だったんだのよね。きっと)
(まずは、今のこの作業は自分の仕事だってこと、ちゃんと認識させなきゃ)
(まったく、もう。なんで、そんなとこから始めなきゃならないんだろ)
(あー。もう。牧野のバカー)
(ホントにバカー)


そんな八つ当たりをしながら、この子のために、あと何度、困ったなあとぼやきながら、こんな湿っぽいため息を吐くことになるのかと考えると、思い切り、頭を抱えたくなる衝動をなんとか堪えて、明子は幸恵にまた話しかけた。

「管理表にあるとおり、私の作業は、原田さんが作った画面設計書の検収だけよ。牧野課長から、原田さんの質問には答えるようにと指示されているから、質問には応じるけど、私が関わる作業はそれだけだから、私に仕事の指示を仰ぎにこなくて大丈夫よ」

幸恵は目を丸くさせて、明子を凝視していた。
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