リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「管理表のスケジュール通りに、どんどん、作業を進めて大丈夫ください。いちいち、私に次の作業を確認にくる必要はないわ。私も管理表を確認して、作成済みになっている設計書を検収していくから、管理表にその都度、進捗状況をちゃんとあげてくださいね」
「そんなこと、小杉さんの仕事じゃ」
「違うわよ。原田さん。朝、部長から言われたでしょう。進捗管理は自分でしろって。言われたわよね?」

幸恵は不貞腐れたように「言われたけど、それがなんなのよ」と、明子に聞き返した。
やっぱり、その言葉の意味も判っていなかったのねと、明子はまた、困ったなあと内心でぼやきながら、幸恵を見つめたまま話し続ける。

「原田さんが進捗管理をするってことは、私は原田さんの仕事の進捗状況の確認も管理も、しないわ。原田さんが自分で自分の仕事の進捗管理するのよ」
「そんなの、おかしい」
「おかしいと思うなら、部長に言いなさい。朝は判りましたと答えましたが、納得できませんって」

明子の言葉に、それでもまだ納得がいかないのか「そんなの、おかしい」と繰り返す。
明子もまた、すでに告げた言葉と同じ内容の言葉を繰り返す。

「次に何をしなきゃいけないのか。管理表で、原田さんが確認して、仕事を進めてください。私に次の仕事の指示を仰ぎにきても、私は指示できません。不服なら、部長にそう申し立ててください」

明子の言葉に、幸恵は悔しそうに唇を噛み締めた。野木や小杉あたりにならいくらでも反発できても、部長相手では、さすがの幸恵も二の足を踏んでいるようだった。


(まあ、ここでね)
(判りました、そうしますとなんて言われたら)
(さすがに、呆れるしかないけどね)


明子はその頬に、やや苦笑いを浮かべながら、幸恵に仕事を始めるよう促した。
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