リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
おそらく、幸恵が気づいていないことに気づかせてやるタイミングは、これでよかったはずと思うのだけれど、その効果があったのか、明子にも判らなかった。
なんとなく、幸恵の一連の行動には、こういうことをして明子を困らせて仕事を遅れさせれば、明子が困った事態になるはずだと、そう吹き込んでいる者がいるに違いないと、明子も薄々察していた。
おそらく、坂下あたりだろうと踏んではいたけれど、今の様子で、それはほぼ確信に変わった。
幸恵は管理表などロクに確認していないだろうと、明子は踏んでいた。
もしくは、見ても、そこに自分の名前があることの意味が判っていなかったのかもしれない。
そう危惧していた。
それから、朝、部長に言われた言葉に、判りましたとそう頷いていた顔から、その意味を理解できていないことも予想できた。
だから、その事実は正しく坂下には伝わらず、そんな坂下の入れ知恵を鵜呑みにして、こんなことをしていたに違いないと理解した。
だからこそ、明子は、うんざりとした重いため息を零した。
坂下は、どうしてそんなことをするのだろうと思うと、腹が立つやら情けないやらで、無意識のうちに明子は坂下を睨みつけていた。
先輩なら先輩らしくと言った渡辺の言葉に、その通りよと、一緒になって加勢して、あの場で坂下をギリギリと締め上げてやり込めたいところだったが、それは堪えた。
野木が、思わぬ一撃を浴びせてくれたので、それは堪えることにした。
けれど、やはり行き場のない怒りが、ふつふつと腹の底でたぎっていた。
その怒りが伝わったのか、明子の視線に気づいた新藤が、明子を顎で指しながら坂下に何か小声で囁くのが見えた。
ふいと、視線を逸らしたが、坂下はなんだよと荒げた声を張り上げた。
「俺に、なんか言いたいことでもあるのかよ」
「別に」
明子がさらりとした声でそう答えたことが、逆に坂下の神経を逆なでしたらしい。
なんとなく、幸恵の一連の行動には、こういうことをして明子を困らせて仕事を遅れさせれば、明子が困った事態になるはずだと、そう吹き込んでいる者がいるに違いないと、明子も薄々察していた。
おそらく、坂下あたりだろうと踏んではいたけれど、今の様子で、それはほぼ確信に変わった。
幸恵は管理表などロクに確認していないだろうと、明子は踏んでいた。
もしくは、見ても、そこに自分の名前があることの意味が判っていなかったのかもしれない。
そう危惧していた。
それから、朝、部長に言われた言葉に、判りましたとそう頷いていた顔から、その意味を理解できていないことも予想できた。
だから、その事実は正しく坂下には伝わらず、そんな坂下の入れ知恵を鵜呑みにして、こんなことをしていたに違いないと理解した。
だからこそ、明子は、うんざりとした重いため息を零した。
坂下は、どうしてそんなことをするのだろうと思うと、腹が立つやら情けないやらで、無意識のうちに明子は坂下を睨みつけていた。
先輩なら先輩らしくと言った渡辺の言葉に、その通りよと、一緒になって加勢して、あの場で坂下をギリギリと締め上げてやり込めたいところだったが、それは堪えた。
野木が、思わぬ一撃を浴びせてくれたので、それは堪えることにした。
けれど、やはり行き場のない怒りが、ふつふつと腹の底でたぎっていた。
その怒りが伝わったのか、明子の視線に気づいた新藤が、明子を顎で指しながら坂下に何か小声で囁くのが見えた。
ふいと、視線を逸らしたが、坂下はなんだよと荒げた声を張り上げた。
「俺に、なんか言いたいことでもあるのかよ」
「別に」
明子がさらりとした声でそう答えたことが、逆に坂下の神経を逆なでしたらしい。