リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
ジャケットを脱ぎネクタイも外し、第二ボタンまで外して襟元を開けたストライプ柄のワイシャツと、細身のスラックスだけの姿になった牧野は、オムライスはもとより、スコーンもすべてきれいに平らげた。
明子を隣に座らせ、ときおり、明子の口元にジャムをのせたスコーンの欠片や、スプーンにのせたオムライスを運ぶ牧野は、楽しそうだった。
照れくさそうな顔をしながら、そんな牧野に付き合っているふりをしている明子も、内心では嬉しかった。
空いた湯呑みにお茶を入れてこようと立ち上がった明子の背に向かって「やっと、腹が落ち着いた」と満足げに言うと、そのままゴロリとソファーに横たわった。
「もう。お行儀が悪いですよ。そんなんじゃ、牛になっちゃいますからね」
二杯目のお茶を注いでキッチンから戻ってきた明子は、まるで母親のように「困った人だなあ」と小言をこぼしながらも、お腹一杯で動けなくなった子どものような顔をして寝そべっている牧野に苦笑した。
明子の言葉に、そんなものは迷信だと速攻で反論してくるだろうという予測に反して、牧野は不思議そうな顔で明子を見ているだけだった。
リビングのテーブルに二人分のカップを置くと、牧野はのそりと体を起こしてソファーに座り直し、対面に座ろうとしている明子の手を引いて、自分の隣に座れと促した。
「牛って、なんだ?」
初めて聞いたというような顔で尋ねる牧野に、明子は目を瞬かせながら答えた。
「子どものころ、お母さんに言われませんでした? 食べてすぐ寝ると牛になるって」
明子の何気ない言葉に、牧野は一瞬、その言葉を詰まらせたように黙り込み、やがて「ねえな」と、吐き出すようにぼそりと告げた。
「だいたい、ガキのころなんて、腹一杯になるほど、食ったことなんかなかったしな、俺」
明子の肩に凭れるようにして寄りかかってきた牧野の声は、今にも寝てしまいそうな様子だった。
酔った勢いで明子に寄りかかって寝てしまうことなら、昔から何度もあったけれど、こんなふうに穏やかな表情で甘えるように寄りかかられることなど初めてだった。
明子を隣に座らせ、ときおり、明子の口元にジャムをのせたスコーンの欠片や、スプーンにのせたオムライスを運ぶ牧野は、楽しそうだった。
照れくさそうな顔をしながら、そんな牧野に付き合っているふりをしている明子も、内心では嬉しかった。
空いた湯呑みにお茶を入れてこようと立ち上がった明子の背に向かって「やっと、腹が落ち着いた」と満足げに言うと、そのままゴロリとソファーに横たわった。
「もう。お行儀が悪いですよ。そんなんじゃ、牛になっちゃいますからね」
二杯目のお茶を注いでキッチンから戻ってきた明子は、まるで母親のように「困った人だなあ」と小言をこぼしながらも、お腹一杯で動けなくなった子どものような顔をして寝そべっている牧野に苦笑した。
明子の言葉に、そんなものは迷信だと速攻で反論してくるだろうという予測に反して、牧野は不思議そうな顔で明子を見ているだけだった。
リビングのテーブルに二人分のカップを置くと、牧野はのそりと体を起こしてソファーに座り直し、対面に座ろうとしている明子の手を引いて、自分の隣に座れと促した。
「牛って、なんだ?」
初めて聞いたというような顔で尋ねる牧野に、明子は目を瞬かせながら答えた。
「子どものころ、お母さんに言われませんでした? 食べてすぐ寝ると牛になるって」
明子の何気ない言葉に、牧野は一瞬、その言葉を詰まらせたように黙り込み、やがて「ねえな」と、吐き出すようにぼそりと告げた。
「だいたい、ガキのころなんて、腹一杯になるほど、食ったことなんかなかったしな、俺」
明子の肩に凭れるようにして寄りかかってきた牧野の声は、今にも寝てしまいそうな様子だった。
酔った勢いで明子に寄りかかって寝てしまうことなら、昔から何度もあったけれど、こんなふうに穏やかな表情で甘えるように寄りかかられることなど初めてだった。