キスはおとなの呼吸のように【完】
どうしたものか。

わたしはカズトと目を見あわせた。
もうしわけなさそうなうなずきが返ってくる。

「はあ……」

しかたがない。
わたしはいった。

「先輩。駅まで送っていきます。電話もしてないんでしょ。奥さんも心配しているはずです。さあ、帰りますよ」

こんな調子じゃ駅までの途中で倒れて眠りこけそうだからということまではいわなかった。

わたしにだけきこえる小声でカズトがいう。
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