キスはおとなの呼吸のように【完】
「あの人は?」

カズトの顔を見たとたん、鼻の奥に熱いものがこみあげた。
言葉すくなに、わたしはたずねた。
先ほどのサラリーマンの姿もなかった。

わたしから視線をそらし、ふたたびうしろをむいたカズトはいった。

「今日はもう営業できそうにないから、あやまって帰ってもらった」

「そっか」

わたしはいった。
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