キスはおとなの呼吸のように【完】
「寒いのに、こんなところでしゃがんでいたら、風邪ひいちゃうよ」

「うん」

背中ごしのカズトはうつろに返事をする。

「ほうきとちりとり持ってくるから、ふたりで片づけてなかにはいろう」

「うん」

だがカズトは返事をするだけで、割れたガラスを拾う作業をやめなかった。
おおきな破片を一枚、また一枚と拾いあげては、左手にのせていく。

わたしはそれ以上なにもいえず、視線をカズトとおなじ地面に移した。
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