それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
それは、根岸先輩の気遣いだったのだろうか。
それとも、何も考えずいつもどおり、軽口を言っただけだったのだろうか。
どちらにしろ、生川先輩の心を軽くしたことには変わりはないわけで。
「だけど、あいつさ。
女子描き放題みたいなこと言ってたくせに、あいつが人物描いてるとこ、見たことないんだよね」
何気なく言った生川先輩の言葉に驚いた。
そういえば、入部してから間もないとはいえ、わたしも見たことがなかった。
『きれいに描いてやるぞ』なんて言ってたけど、描いているのはいつも、静物画だ。