優しいなんて、もんじゃない



お酒の話を自分の中だけで片付けてしまったらしいユウは、一人さっさとグランドピアノへと向かって歩いていく。


その後ろ姿は、やっぱり女みたいに細いけれど。結構、背はでかいな。




私的にはまだ話を片付けきれてないから嫌なんだけど、まあ、いいや。


ゆったりとした歩みで私も先にユウが立つピアノへと近寄る。私が傍に来ると同時、ユウはしゃがみ込んでしまうから何だか腹が立った。




「ねえ。」

「はーい?」

「…帽子、取らないわけ?」


そう言って、見下ろしたユウの肩は一瞬小さく揺れた。



「んー…。」

「…、」

「脱ぎたいんだけど、駄目なんだよね。」

「…駄目?」

「うん。」

「どうして?」



首を傾げた私に、ユウは帽子を取ることなく目が見えないギリギリのところまで顔を持ち上げ。





「大変なことに、なっちゃうから。」


と、なんとも意味不明だが意味深なことを呟いたのだった。




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