優しいなんて、もんじゃない
なんて、ただの八つ当たりでしかない。現状、今の私は一人苛々していて何だか馬鹿みたいだ。
苛々の理由が分からないから、それはさらに募る。
と。
カウベルの音が心地良く響き、ドアから滑り込むように見覚えのある男性が入って来る。
今日はチャコールグレーの質が良さそうなスーツ。優しげな顔を助長させるようでよく似合っている。
「こんばんは。」
「あ、河井さーん!」
やんわり微笑む河井さんに、弥生さんは無邪気に笑い片手を上げる。本日のお客さん第1号だ。
「何のむ?」
「じゃあ、ジンライムで。」
「りょーかい。」
河井さんは、いつものように注文を告げると。その緩く孤を描く瞳に私を映した。
こんばんは優ちゃん、と微笑む彼は大人の男性の雰囲気を自然に出してくるから素敵だ。