高天原異聞 ~女神の言伝~
「好き嫌い、ある?」
美咲の出したものを美味しそうに平らげている慎也は、少し考えてから、
「好き嫌いは、特にないけど、揚げたてじゃない揚げ物はちょっと嫌かな」
と言った。
「揚げたてじゃない揚げ物?」
「うん。コンビニの弁当に入ってるやつとか。レンジで温め直すと弁当の揚げ物ってしんなりするじゃん。衣がサクサクしたのが食べたい」
「じゃあ、夜トンカツにしてみる?」
「ホントに? すごい嬉しい。ありがと、美咲さん」
「衣つけて揚げるだけよ」
「そうじゃなくて、夜ご飯も食べさせてくれるなら、今日も夜まで美咲さんと一緒にいていいってことだよね」
「――」
そこまでは考えていなかった美咲が返答に困っていると、
「ごちそうさまでした」
手を合わせて礼儀正しくいうと、慎也は食べ終えた食器を流しへと運んでくれた。
それどころか、一緒に洗うとまで言い出した。
「美咲さんと一緒にしたいんだ。美咲さんとするなら、何でも楽しい」
そんな甘い言葉に、美咲の心が温かくなる。