高天原異聞 ~女神の言伝~
新婚夫婦のように仲良く並んで食事の片づけをした後も、慎也は何かとしたがるものだから、土曜の早朝から、二人は洗濯や掃除機がけやらキッチンのタイル拭きやら風呂掃除まで付かず離れずですることになった。
それでも、全て終えてもまだ九時を少し過ぎた時間だ。
「お疲れ様」
温かい緑茶を出すと、ベッドサイドに背を預けて慎也は嬉しそうに受け取る。
「楽しかった。またしたい」
「じゃあ、次もお願い」
「うん」
窓は開いていて、梅雨明けのきれいな青空と、流れていく雲が見える。
爽やかな風が入ってきて、洗い立てのシーツが風に揺れる。
遠くで小さな子供の笑い声がする。
切り取られたような空間の中で、二人はただ寄り添っていた。
幸せとは、こんなささやかなもので十分なのだと、美咲は思った。