高天原異聞 ~女神の言伝~

「――」

 美咲は小さく息をついた。
 どっと疲れてしまった。
 女子高生の観察眼は侮れない。

 たった数日で、そんなに自分は変わったのだろうか。

 あれから、慎也は日曜の夜までずっと美咲のアパートで過ごした。
 おしゃべりをして、食事をして、抱き合って、眠って、それだけのことなのに、すごく幸せで。
 日曜の夜も、本当は離れたくなかった。
 ドアの前で何度も何度もキスをした。
 ドアが閉められて姿が見えなくなったら、もう逢いたくて泣きそうになった。
 追いかけて引き留めたかった。
 帰り道にくれる慎也からの携帯のメールは、慎也が家について寝るまで返信が続いた。
 いつも一人で眠っていたベッドは、やけに広く、冷たく、寂しく感じた。
 明け方近くに、何か夢を見たはずなのに、また思い出せなかった。

 恋をして、幸せで、それだけでいいはずなのに。

 切なさと切り離せないこの恋も、来年には笑って思い返せるようになるのだろうか。





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