高天原異聞 ~女神の言伝~

「お化け? まさか」

「本当だよぅ。学校の七不思議の一つにあるよ。ずっと昔、旧校舎だった頃、プールで溺れて死んじゃった男子生徒の幽霊」

「そうそう。足引っ張って溺れさせた友達を探してるんだって。朝来たら机と椅子がプールの水で濡れてるって。ちょーこわーい」

「だからぁ、暗くなったら校舎に残ってちゃだめだよ」

 美里がさらに付け足す。

「普通棟は4階まで来たらしいから、次は特別棟だよ。図書館は普通棟と特別棟の渡り廊下だから、特別棟が終わったら、来るかも。塩素の臭いしたらすぐ逃げてよ」

「怖いの嫌いなのに、そんな話しないでよ」

 莉子が美咲の腕にしがみつく。

「あたし達もきらーい。でも、何でか、こーいう話はみんなとしたくなっちゃうんだ」

 今時の女子高生はこんなに人懐こいものなのだろうか。
 戸惑いながらも懐かれて嫌な気分はしない。
 妹がいたらこんなものなのかと、美咲は女子生徒の好きにさせていた。

「はいはい、噂話はここまで。本を借りたら速やかに戻るか、静かに読んでいきなさい」

 司書教諭の山中がひょっこりとカウンターから右手の事務室兼図書準備室から顔を出す。

「はぁーい」

「美咲先生、またね~」

 ひらひらと手を振って、二人は校舎へと向かう渡り廊下へと消えていった。




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