高天原異聞 ~女神の言伝~
「すみません、山中先生。うるさくしてしまって」
「いいのいいの。あの子達はただ、じゃれたいだけなんだから。藤堂さんが本を薦めてくれたおかげで、大分落ち着いたわ。これからもお願いね、うるさいけど、根はいい子達だから相手をしてあげて」
「は、はい」
「それより、藤堂さん、書庫から資料を探してきてくれる? ここにメモしてあるから」
「はい」
「量が多いから助っ人を――お、タイミングいいな。時枝君、手伝いよろしく」
「いいですよ」
返却本を書架へ返し終わり、戻ってきた慎也が山中からメモを受け取る。
「これ見つけてくればいいんだね」
「そう。藤堂さん一人だと時間かかるから、二人でよろしく。二人なら三十分ぐらいで終わるでしょ。昼休み終わるまでにはできるよね」
「了解」
カウンター奥の引き戸を開けると、美咲を待つ。
「どうぞ、美咲さん」
「どうも――」
視線を合わせないよう美咲はさっさと書庫に入る。
引き戸が閉められると、階段を上るところで慎也が後ろに追いついた。