高天原異聞 ~女神の言伝~
「何か、モテモテだね、美咲さん」
少し面白くなさそうに慎也が呟く。
「ちょっとおしゃべりしてただけよ」
「だって、俺が話しかけると人目を気にしてそっけないくせに、他の奴らだと態度が違うじゃない。そんなんだと、かえってばれると思うけど」
階段上りきった所で、美咲は振り返った。
「そんなにあからさま?」
「めちゃくちゃあからさま。鈍い奴でも気づくよ」
肩を竦めて、慎也は吐息混じりに答える。
「だから、もう少し俺にも話しかけてよ」
「む、無理よ。今だって、精一杯なのに」
慎也を見ると、目を離せなくなるのは自分のほうだ。
目が合うと胸が高鳴る。
熱を帯びた視線が自分に向けられるのがすぐにわかるからだ。
軽く溜息をつくと、慎也は少し顔を下げて美咲の顔を覗き込む。
「ちなみに、うちの学校の七不思議って、本物らしいよ」
「嘘っ!?」
「ホント。音楽室の音楽家の目が動くとか、誰もいない体育館でボール突く音とかって、ありきたりな話じゃないもの。この学校、校舎自体は新しいけど、旧校舎を順に改築していったから、そのままの敷地だし、昔の間取りも変えてないしね」