高天原異聞 ～女神の言伝～

　私立高校の図書室とはいえ、規模としては県立図書館にひけをとらない。
　読書好きの理事長の道楽のおかげで設備にも手間をかけただだっ広い図書館は、ここ数年、学生だけでなく一般にも門戸を開いている。
　学生が使うための校舎との渡り廊下で通じる扉の隣には、一般客用の入り口も用意されている。
　土日の解放も積極的に行なっているため、学校勤務の司書教諭だけでなく、アルバイトの司書も補充された。
　そのアルバイトの一人として臨時採用になれたのは美咲にとっては幸運としかいいようがなかった。
　加えて、蔵書の量といい、館内の雰囲気といい、まさに理想的と言っていい職場だった。