高天原異聞 ~女神の言伝~
今日はすでに入学式が終わり、一般客のみがまばらに読書を続け、館内はひっそりと穏やかな空気に包まれている。
かすかに響くエアコンの音。
絨毯に吸われるささやかな足音。
不規則に捲られるページの、潔く控えめな乾いた音。
書架に戻される時の、本同士が擦れ合う摩擦音の密やかさ。
その全てが、否応なく乱してはならない静寂を引き立てるのだ。
そのような静謐を、美咲は懐かしむように愛していた。