高天原異聞 ~女神の言伝~
その時。
すっと身体が冷えていくような感覚。
それまで肌に感じていた全ての熱が消えたようだった。
また、あの自分のものではないような感覚が押し寄せてきた。
悲しくて、辛くて、胸が痛い。
美咲は、叫びだしたい衝動を堪えた。
自分のものではないその感覚に翻弄されないように目を閉じて必死に耐える。
だが、美咲の変化に慎也が気づいて、顔を上げた。
「美咲さん?」
呼ばれて、美咲はきつく閉じていた目を開けた。
心配げな慎也の顔が間近にある。
ほっとして、息をついた。
「――もしかして、誰かに無理やり触られたことでもある? 俺に触られると、そのこと思い出す?」
慌てて首を横に振る。
「でも、そんな感じがする。最初はそんなんじゃないのに、途中で何か思い出したみたいに身体が強張る。図書館でもそうだった」
シャツの前を重ねて、慎也は少し身体を離した。