高天原異聞 ~女神の言伝~

 時計の秒針しか、聞こえなくなったとき、慎也が抱きしめていた美咲の身体を優しく離す。

「帰るよ。これ以上ここにいたら最後までしたくなるから」

「――いいの?」

「美咲さんのすごく可愛い顔見れたから我慢する」

 音をたててキスをすると、慎也は立ち上がって玄関へと向かう。
 美咲はまだ甘く疼く身体で慎也に続く。

「俺が出たら、ちゃんと鍵かけて。チェーンもね」

 名残惜しげにもう一度キスすると、慎也はドアを開けてするりと出て行った。
 美咲は言われるままに鍵をかけて、チェーンをかけた。
 そのわずかな音を聞いたのか、遠ざかる足音が聞こえた。
 ドアに耳をを付けると階段を下りていく密やかな足音。
 ドアの冷たさが、ほてった頬に心地よかった。
 それでも、初めて触れられた身体の熱は、なかなか消えてはくれなかった。














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