高天原異聞 ~女神の言伝~

「美咲さん、大丈夫?」

 そんな美咲に慎也が声をかける。

「……大丈夫」

 答える美咲は、はっと上を見る。
 つられて慎也も見上げる。
 黒い水が追ってきていた。
 咄嗟に慎也が美咲を抱きしめる。
 覆いかぶさるように、黒い水が二人に迫ってきた。
 だが。
 突然、プールの水が意志を持ったようにうねりながら持ち上がり、美咲達に襲い掛かろうとする黒い水を弾き飛ばし、絡めとった。

「うわっ!!」

「きゃあ!」

 水圧と風圧がいっぺんに二人を弾き、二人は水しぶきをあげてプールの中へと落ちた。




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