高天原異聞 ~女神の言伝~

 落ちた衝撃で離れかけた二人の距離を、慎也が引き寄せて近づける。
 水が、二人を優しく包み込んでいた。
 だが、呼吸ができる。
 薄い膜に包まれているように、何かが水と身体を隔てていた。
 水に触れているのに、奇妙にも濡れた感触は無かった。
 揺らめく視界の中、水が、黒い水を包み込み、ねじ伏せ、浄化していく。
 中心が黒く澱んでいた水の球体が、徐々に透度を増していき、やがて、完全に透明になった。
 そして、はじけた。
 砂が散るように、細かい飛沫となって霧散した。
 水がそれを待っていたかのように二人を優しく押し出し、プールの縁へと運んだ。
 先ほどのように、二人はプールの縁のコンクリートの上に立っていた。





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