Sugarless -君だけがいた時間-
私は楓の言わんとしていることが分からなくて、眉間にシワを作った。
「……どうして助けてあげなかったの?」
さあね? とおどけたように、楓が肩をすくめる。
「なんかさ、綺麗だったんだよ、囚われた彼女の姿が。あの場にカメラがあったら、俺、ぜったい彼女を撮ってたね」
「悪趣味」
「そう言うなよ。早紀に言われると辛いよ」
「なんで?」
「だってたぶん、あの女の人ってお前だもん」
「………」
私は言葉を詰まらせて、笑い飛ばすタイミングを失った。
楓はアルバムの中の朝子に視線を移し、独り言のようにつぶやいた。
「だから、お前はリアルじゃないってこと。
もしお前を撮るのなら、俺は、あの世界の中で撮りたい」