Sugarless -君だけがいた時間-
お前、キレイになったじゃん、と楓は目を細めて、私の方に手を伸ばした。
指先が唇に触れる。私は身動きもせず、彼の仕草を受け入れる。まるで、そうされることが当たり前であるかのように。
「でも、この口紅の色、早紀には似合わないよ」
くいっと彼の指が唇をぬぐい、私は、心臓が苦しくなるのを感じた。
いつの間にか楓は車の免許をとっていたらしい。駐車場まで歩いて行くと、シルバーの乗用車の前で立ち止まった。
「親の車だから、ダサいけど」
そう言って助手席のドアを開け、目で合図する。私は軽く微笑んで、車に乗り込んだ。
楓は運転席に座ると、慣れた様子で車を発進させた。