Sugarless -君だけがいた時間-
写真部で良かったと思うのは、こんな時。楓がレンズ越しに見た光景を、誰よりも早く、この目で見ることができるから。
楓の切るシャッターによって、そこにあった時間は、永遠に止められる。
ねえ、と私は一枚の写真を指さした。
「この写真、いつ撮ったの?」
「ん?」
「この、朝子の写真」
指の先には、私たちの親友の朝子を写したモノクロ写真がある。
陸上部の練習風景だろうか。風になびく髪や、汗の散ってゆく様まで、今にも朝子が地面を蹴る音が聞こえてきそうな一枚だった。
「さあね。秘密だよ」