Sugarless -君だけがいた時間-
死んだんですか? と私は聞いた。
下の住民は、とんでもない、という風に首を振った。
「傷は深かったけど、刺し所がよくて命には関わらなかったみたいよ。
ただまあ、もちろんそんなことがあれば離婚だし、そりゃあ引越しの挨拶もせずに出て行くわよね」
刺し所がよくて、というのがよくわかないけど、とにかく幸いにも死ななかったみたいだ。私はうなずきながら回覧板を受け取り、鍵を閉めた。
……刃傷沙汰なんて、おだやかじゃないなあ。
バカな人たちだと前々から思っていたけれど、同情の余地もないくらいバカだったんだなと、改めて思った。
好きな人の心が手に入らないからって殺そうとするのは、まちがってるよ。ねえ、元・隣りの奥さん。