Sugarless -君だけがいた時間-

その展示会は、楓の大学のそばにあるギャラリーで開かれていた。

古めかしい木造の建物に、「アートスペース・LAPIS」と小さな看板がぶらさがっただけの外観は、普通の民家と何も変わらなく見えた。


受付の女の子に案内され、足を踏み入れる。

ギャラリーの中は、真っ白なクロスで覆われていた。どこもかしこも白く、平衡感覚を失いそうだ。パネルに飾られた写真たちだけが、その白に色彩を与えている。


私は一枚の写真の前で足を止めた。

タイトルに『カウントダウン』とあった。その下には撮影者の名前が書いているけれど、見なくても私にはすぐに分かった。


タイトルのとおり、新年の幕開けを待ちわびる人々の写真だろう。

冬のよく冷えた夜に、恋人同士が身をすり寄せ、子供は親に甘え、若者は缶ビールで乾杯している。


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