Sugarless -君だけがいた時間-
やっぱり、楓はすごいね。
被写体の誰もが、こんなにも“普通”だ。
楓が止めた時間は、そこに写る人々を残酷なくらい普通にしてしまう。
誰も、特別じゃない。
「来てくれたんだ」
声をかけられて、私は振り向いた。細身のスーツを着た楓が立っていた。
楓のスーツ姿を見るのは初めてだ。だけどそんな服装をしても不自然に感じないくらい、3年ぶりの彼は、確かに大人になっていた。
「これ、いい写真ね」
「そう?」
「タイトルが何のひねりもないけど」
「いいんだよ、タイトルなんて何でも」
楓は眉を下げて笑う。
「俺の撮るものなんか、何て事ないものばっかなんだから」