水に映る月
お昼前、あたしがバイトに出掛ける時間になっても、慧は、まだ眠っていた。
寝坊しちゃうとイケナイから、あとでメールしてアゲよ♪
初めてのデートで肩を抱かれた時以来、慧と、あんな風に密着することなんて無かった。
「手ぇ、繋ご♪」
って、あたしがオネダリしなきゃ、一緒に出掛ける時だって、彼から触れて来ることは無かった。
ギュッと抱きしめられた余韻が、まだ肌に残ってる。
思い出すだけで胸が熱くなった。
浮き足立つって言うのかな‥。
秋の日差しを浴びて、駅へと向かう足取りは、とても弾んでいた。