水に映る月
 

女の子は意識不明。

一年経った今、彼女が、どんな状態でいるのかさえ分からない。


悔やんで、悔やんで‥。

後悔した時には遅かった。


一度だけ、彼は職務質問を受けている。

遺書も何も残っていなかったせいで、警察は自殺の原因を知らない。


その場を上手くやり過ごした彼は、半年後に今のマンションに引っ越した。



「時々、夢で魘(ウナ)される。あの子が血だらけで追い掛けて来る夢見てな‥。」


慧の声も体も震えていた。

泣いてるんだと分かった。


あたしは、そんな彼に掛ける言葉が見つからなくて‥。


止まらない涙を零したまま、ただ、俯いていた。


 
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