水に映る月
 

「シンさん、悪自慢すきやったからな。ヘタレや思てたけど‥。」


ふと、慧が傷だらけの顔で帰って来た夜を思い出した。



シンの後輩、多田は体格も良くて気が荒い。

シンを庇った多田に、慧は殴られていた。


ただ、その夜以来、シンは慧に何も言って来なくなった。


警察は、ずっと調べ続けていたらしい。

ニ日前、シンは捕まった。


シンの逮捕を知ったのは、仁くんから連絡があったから。

不安になった多田が、仁くんに相談したんだって‥。



「ゆーてる間に、オレらの名前も上がるやろ‥。」


呟くと、慧は哀しい声のまま


「な、純ちゃん‥。」


と、呼び掛けた。


 
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