ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
だがそれも、無理はなかった。
今まで一度も考えもしなかったことに彼は直面したのだ。
きっとこの世界で一番彼を嫌っているだろう女を、愛したという事実に。
「――まいったなあ。本当に」
意外にすんなりと、彼はその事実を受けとめていた。
苦い痛みとともに。
嫌われていることは知っていた。
だからこそ、ことあるごとに彼女の前に姿を見せた。
彼女の神経を逆撫でるようなこともわざとした。
彼女のきつい眼差しも、激しい言葉も、その全てが、彼を惹きつけて離さなかったからだ。
だが、愛されるための努力など、今更できそうもない。
自分はすでに、完成されてしまった。
もう変われない。
死ぬまで、このまま生きていくしかない。
そして、シイナもだ。
彼女も、もはや変われない。
それしかないのだ。
「――」
何もかもが、もう意味がないように、フジオミには思えた。
生きることも、子供をつくることも、未来も、義務も、責任も、全てが色褪せていく。
彼女以外の、全てが。
「シイナ……」
痛みしか呼び起こさない言葉を、フジオミは口にした。
今初めて、彼は自分が一人であることを思い知った。
見知らぬ世界では彼を護るものは何もない。
彼を知る人も、彼が親しんだものも、何も。
ただ一人であること、それはなんという孤独だろう。
なんという苦しみなのだろう。
痛みしか伴わぬこの感情。
彼は誰に教えられなくとも知っていた。
これが、愛だ。
ずっと昔から、彼女を愛していたのだ。
「――」
今更、気づくなんて。