ETERNAL CHILDREN ~永遠の子供達~
「でも、ユウの考え方は、きっと博士は許さないんじゃないかしら」
そして、口火を切ったのは、マナの方だった。
「博士?」
「ええ。あたしを育ててくれた人よ。とても優しくて、素敵なの」
瞬間、ユウの表情が厳しく、険しいものになったことに、マナは気づいた。
「シイナか?」
「ええ、そうよ。どうして知ってるの?」
「シイナ――」
じっと空を睨んで、しばしのち、ユウは低く呟いた。
「あいつは、人殺しだ――」
その言葉に、マナは驚く。
「どういうこと? 博士が、誰を殺したっていうの?」
「マナ、俺も三歳まであそこで暮らしてた」
「あそこって、ドームのこと?」
「ああ。そうだ」
「嘘、だって、あたしはユウを見たことないし、そんなこと聞いたことないわ」
「会ったとしても、小さかったし、覚えていないさ。あいつがマナに教えなかったのは当然だ。自分が殺した子供のことなんか、他人に話す訳がない。
でも、俺は忘れない。あいつが俺にしたことを。決して――」
「嘘よ! 博士は優しい人だもの、そんな、恐ろしいことできるわけないわ!!」
「あんたはあの女を知らないんだ」
「じゃあ、ユウは知ってるっていうの? あたしはユウよりもずっと長く博士と一緒にいるのよ。あたしの知ってる博士は、そんなひどいところ一度も見せたことはなかったわ。どうしてそんなこと、信じられるって言うの!?」
次の瞬間、ボタンを乱暴に外してユウは上衣を剥いだ。
「!?」
膚けた衣服の間から覗く右下腹部には、マナにはわからなかったが銃で撃たれた上に、化膿し、爛れたまま消えなくなった痣が、はっきりと現われていた。
「この傷を見ろ、あいつにやられたんだ。
俺はまだ、生まれて三年しか経ってなかった。あいつは俺を外へ連れていった。ドームの外へ。
初めて見る外の景色に喜んでた俺を、あいつは後ろから撃った。
この傷を見ても、嘘だって言えるのか!?」
「――」
反論できなかった。
わかるのだ。
なぜわかるのかはわからないけれど、ユウの言葉は真実だ。
それがわかっているからこそ、信じたくなかった。
大好きなシイナ。
優しくて、綺麗で、何でも知っていて、何でもできる、大好きな彼女がそんな恐ろしいことをするなんて。
他に何も考えられない。
ただ、苦しかった。
「――」
こぼれる涙をとめることはできなかった。
ユウはマナをじっと見つめていた。
「マナは何も知らないんだ。それはマナのせいじゃないけど…」
「――」
ユウはそのまま、一人で廃墟へと戻っていった。
取り残されたマナは動けなかった。
「博士…嘘よね、そうよね…」