悪魔の花嫁
花嫁修行
合図の鐘が鳴ると花嫁達は、この、長くそびえ立つ『姑の搭』に集まる。見た目、どっかの教会みたいで、愛士は初めて見たとき、悪魔の領域なのにいいのか?っと思っていた。

搭の中には二階に置かれた机で、いつも慌しく作業をする、兎執事がいる。彼はこの作業を取仕切る者で、『案内人』だ。

『案内人』は花嫁達に正確に仕事を与えなければならない。

実は、『花嫁』は2種類ある。それを1匹・・、いや、1人で管理しなければいけないのだから。いつも慌しくて当然。

まず、愛士達の『魂を狩る者』がある、これは、以前説明した通り、100歳に満たしていない残りの寿命を狩り取る役目。そして、もう1つが、『霊を狩る者』。これはいわゆる、呪縛霊達を狩り取る役目。愛士も、この搭に来て、初めて知った。

彼等は互いにまだ会った事がない。仕事時間が違うから、顔を合わす事が無い。

鐘の合図も、「魂の者」は4回、「霊の者」は6回と区別されている。

愛士も会って見たいと思いながらも、仕事に慣れるのが大変で今ではそう思う事も少なくなっていた。

搭の扉を開け、愛士は元気良く、兎執事に声をかける。

「おはよう~!!バトンさ~ん!」

バトンと呼ばれ、兎執事の長い耳がピクピクっと動く。二階の机から下を見下ろすと、愛士が駆けてきていた。

「おお、おはようございます。愛士さん、今日も可愛らしいですね。」

「んが!!!」

バトンの余計な一言に、愛士は力が抜ける。だって、彼は冗談とか、からかいとかでは無く、本気で言ってるのだから、たちが悪い。

力が抜けている愛士をよそに、後ろから歩いて来ていた希咲がバトンに声をかけた。

「今日の仕事は?」

その言葉に、バトンは立ち上がり、書類を持つと、ふわっと二階から、飛び降りる。

音も無く着地すると、仕事の説明を始めた。

「今日の仕事分の書類です。今回は、寿命の方が多いので、名前と時間を間違わないよう、良く目を通しておいてくださいね。」っと分厚い書類を、希咲と円に渡す。

書類には、顔写真、名前、そして、肉体寿命時間が書かれている。その肉体寿命時間に、鎌を振り下ろす事で、死が成立する。
































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