久遠の花〜 the story of blood~
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 目を開ければ、ゆらゆらと光る水面。

 ゆっくり、ゆっくり。体が徐々に沈んでいく。





 ――あぁ、そっか。





 これから、返るんだ。

 日向美咲は消えて、別のモノが支配する。

 ゆっくり、ゆっくり。体が徐々に溶けていく。





 ――あと、どのくらい。





 【私】と言う個は、存在できるだろう。

 残るは思考のみ。全てが無になるなら、それまで――。


 *****


 蓮華が繋げた場所は、自分の世界。屋敷に桐谷たちを案内すると、門の先で、一人の男が立っていた。


「――ご無事で、なによりです」


「相変わらず、心配症だな。
 これから、重要な話をする。ここには誰も近付けるな」


 頷くと、男はすぐにその場から立ち去って行った。


「まずは、シエロを寝かせてくる。リヒトたちは、奥の部屋で待っていてくれ」


 言われたとおり、桐谷たちは奥の部屋へ進んだ。

 雅は蓮華と共に、別の部屋へ進んだ。

 案内されたのは、六畳ほどの畳の間。

 家具は一切無く、生活感が感じられない部屋だ。

 そこに布団を敷きシエロを寝かせると、蓮華は自分が腕にしていた数珠を外し、シエロの腕に付けた。
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