久遠の花〜 the story of blood~
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「これに――記憶はない」





 体を起こし、【これ】に指を向ける。すると、目の前の女性は悲しげに、【これ】を見つめた。


「間に、合わなかった……? もう、貴方の中にいないの!?」


 両肩を掴み、大粒の涙を流しながら女性は言う。


「どうっ、したら……。これじゃあまた、美咲ちゃんだけっ!」

「――――すみません」


 それしか、言葉が思いつかなかった。


 よく知らないけど、彼女はおそらく、【これ】のことを思って泣いていると思うから。


「私のこと――全くわからない?」


 じっくり顔を見ても、彼女の記憶はない。首を横に振れば、彼女はまた、涙を流してしまった。


「――――こうなってしまったら、しょうがないわ。今、貴方が持ってる意思を聞かせてちょうだい」


 ――――意思?

 それは、望みや願いのことを言っているのだろうか?

 聞けば、彼女はそうだと言って頷く。




 ――【これ】の、意思。





 考えを巡らせると、そこにあるのは、





「みんなを――護ること」





 その一点。

 強く。その言葉が刻まれていた。
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