久遠の花〜 the story of blood~


「迎えなんてよかったのに」

「だって、ヒカルさんが来るのよ?
 我らが始祖を迎えないわけにはいかないじゃない。――――数日ぶりですね、ヒカルさん」

「えぇ。顔色がいいようで安心しました」

「ちゃ~んと、貰った薬は飲みましたから。――――ノヴァ」


 呼ばれ、叶夜は間の抜けた声をもらした。

 こうしてまともに彼女と会うのは百年ぶりだったか。昨日のことがあるだけに、エメにどんな態度をとればいいのかと、叶夜迷っていた。


「こ~ら。聞こえないの?」


 そばに行き、顔を覗き込む。

 視線が絡まると、エメは勢いよく、叶夜に抱き付いた。


「え、エメ……さん?」

「生きててよかった。ちゃんと心があるままで……よかった」

「……エメさんの、おかげです」


 幼い頃に、知識を与えてくれた。だから今の自分があるのだと、叶夜は感謝していた。


「貴方も無事で……よかった」


 背中に手を回した途端、


「そこは認めない!」


 がばっ! と、二人は雅に引き離された。


「エメもさ、なんでオレの前でイチャつくかなぁ~」


 エメを背後から抱きしめ、頭に顎を置きながら話す。余程気にくわなかったのか、顔が拗ねている。


「あ~ら。だってノヴァは私の子よ? 包容ぐらい当たり前でしょ?」


 ピーンと、その場の空気が凍る。

 エメにとっては悪気の無いこの言葉も、まだ叶夜と雅にとっては、埋められていない溝。触れてはいけない事柄だった。
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