久遠の花〜 the story of blood~
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「早く退避した方がいいですね。そろそろ、空間が保てなくなります」
少女のそんな言葉に、蓮華は深いため息をはいた。
「お前……何故それ程までに詳しい」
「私、様々な空間の境目を監視するのが役目なもので。一応、一級ライセンスも有りますよ?」
懐から銀色の鍵を取り出し、少女は口元を緩めた。
「なので、すぐにでも人の世に繋げます。本当に急がないと、ここも危ないですよ?」
「――蓮華様」
何処からともなく、木葉が叶夜たちの前に現れた。蓮華のそばに寄ると、持って来た薬を飲ませ始める。そして蓮華を抱えると、少女に人の世に繋げることを頼んだ。
「蓮華様には、傷の修復に力を使っていただだきますので」
「了解です」
今度は、懐から小瓶を取り出す少女。蓋を開ければ、中から淡い色をした蝶が舞い出てきた。次第にそれは数を成し、一つの塊になっていく。
「とりあえず、人目につかない場所に出ますね」
中心に鍵をさせば、蝶と同じ淡い光が、叶夜たちを包んでいった。
◇◆◇◆◇
――――歩いて、る?
自分が体を動かしていることが不思議で、思わず、そんな考えが過ってしまった。
私の手を引くのは、見知らぬ中年男性。でも本質は、私の知る人物。……いえ。だった、と言う方が正しいわ。
もう、彼の中に彼はいない。在るのは、己のことしか考えない、破壊衝動を備えた部分なんだから。
「早く退避した方がいいですね。そろそろ、空間が保てなくなります」
少女のそんな言葉に、蓮華は深いため息をはいた。
「お前……何故それ程までに詳しい」
「私、様々な空間の境目を監視するのが役目なもので。一応、一級ライセンスも有りますよ?」
懐から銀色の鍵を取り出し、少女は口元を緩めた。
「なので、すぐにでも人の世に繋げます。本当に急がないと、ここも危ないですよ?」
「――蓮華様」
何処からともなく、木葉が叶夜たちの前に現れた。蓮華のそばに寄ると、持って来た薬を飲ませ始める。そして蓮華を抱えると、少女に人の世に繋げることを頼んだ。
「蓮華様には、傷の修復に力を使っていただだきますので」
「了解です」
今度は、懐から小瓶を取り出す少女。蓋を開ければ、中から淡い色をした蝶が舞い出てきた。次第にそれは数を成し、一つの塊になっていく。
「とりあえず、人目につかない場所に出ますね」
中心に鍵をさせば、蝶と同じ淡い光が、叶夜たちを包んでいった。
◇◆◇◆◇
――――歩いて、る?
自分が体を動かしていることが不思議で、思わず、そんな考えが過ってしまった。
私の手を引くのは、見知らぬ中年男性。でも本質は、私の知る人物。……いえ。だった、と言う方が正しいわ。
もう、彼の中に彼はいない。在るのは、己のことしか考えない、破壊衝動を備えた部分なんだから。