久遠の花〜 the story of blood~


『なら、器を破壊することだ』

「はっ、もっと難しいことを」

『そんなことはないだろう。貴女の力の根本――それは【静止】だ。攻撃でなくそれに特化すれば、好機は訪れると思うが?』

「……まぁ、少しは参考にはさせてもらおう」

『好きなように。また何かあれば来い』

「機会があればな」

『なんだ、やけに冷たいな?』

「今に始まったことではないだろう?」


 ではな、と言いながら、蓮華は背を向けた。





『――――レンカ』





 足を止め振り返ると、男は悲しげな表情を浮かべていた。


『役目を任せて……すまない』

「何を言うかと思えば。……謝るのは、私の方だ」


 男がここから出られない理由。それは、蓮華が原因だった。

 王華が里に侵入し、仲間を連れていかれた蓮華は、力が暴走し目の前の男を巻き込んでしまった。咄嗟に男は防壁を張り生きながらえたものの、蓮華の力で覆われたそこから抜け出すことが出来なくなってしまった。


「未だに術が見つからない。仲間を巻き込むなど、長として失態だ」

『そう責めるな。むしろ俺は、お前同様長生きでることは得だと思うぞ。――感情はどうする?』

「以前より増しているのか?」

『今見た様子ではな』

「ならば消す」


 再び、岩壁に手を添える。

 同じ過ちを犯さぬ為、感情を希薄にする作業を、蓮華は進めて行った。
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