久遠の花〜 the story of blood~
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 辿り着いた先にあったもの。それは、空に届くほど高くそびえる塔。神々しい雰囲気だが、少し離れると、辺りには黒い霧のようなものが蠢いている……。

 今のところ体に異常は無いが、アレには触れない方がいいだろう。


「妙な空間だねぇ~」


 帰れるといいけど、と少年は苦笑いを浮かべる。


「門を護る者もいない、か」


 それだけ自信があるのか。それとも――。


「何にせよ、楽して入れるならいいじゃん。こっちが油断しなきゃいいんだし」


 気を引き締め、塔の中へ足を踏み入れれば――。





「っ――なん、で」





 鉄格子を揺らす音。

 言葉にならない叫び。

 今見える全ては、ここに在るはずの無い――オレが産まれた場所と、同じ空間が広がっていた。


「いきなり実験場だなんて、歪な造りしてるね」


 間違いなくあの場所だ。でも……どうしてこの場所に。





「――――ねじれてる」





 ぽつり、使い魔が呟く。


「空間だけじゃない。おそらく、ここに流れる時間も違う」

「君たちが挑む相手ってのは、かなり手強いやつだね」

「歪んでいるなら、美咲の居場所はどうなる?」

「問題無いが……あまりいいとは言えない」


 時々気配を見失うらしく、その度に多く力を使うらしい。だからあまり戦闘では期待するなと、念を押された。
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