久遠の花〜 the story of blood~
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 目の前にある情報を処理するのに、オレの頭は時間を要した。

 月は欠け、歪な形。降り注ぐ光は不思議な色を放ち、感覚を鈍らせていく。

 美咲を中心とし、その周りに開く大きな花。高さは数メートル。飛び上がり引きはがそうとするも、美咲の体はしっかりと繋ぎとめられていた。


「美咲、美咲っ!」


 呼びかけても反応は無い……。

 体の周りは樹脂のようなもので覆われ、美咲の皮膚は硬化していた。

 これだけでも頭が一杯なのに、更に困惑させたのが長の行動だ。花が咲くのを見届けると、高笑いを上げながら自らの首を切り裂いた。まだ血は流れているが、もう動く気配は無い。


「――――やられたか」


 振り向けば、眉間にしわを寄せた蓮華さんが立っていた。


「下りて状況を説明しろ」

「でも美咲がっ」

「早くしろ」


 有無を言わさぬ口調。これ以上拒めば命が無いと思えるほど、蓮華さんの雰囲気は違っていた。渋々下りれば、蓮華さんは胸の傷を手当てし始めた。


「出血が酷いな。――それで、この有様はどういうことだ」

「長がっ。日向さんの腹に、剣を刺した途端……」

「それでこうなったのか?」


 頷けば、蓮華さんはまじまじと花を見つめる。







「――――遅かった」







 嫌な言葉。淡々と、蓮華さんは続きを話す。


「体はここに在るが、魂が無い。――助けても、魂が無ければ肉体は維持出来ぬ」


 胸の傷を塞ぐと、蓮華さんは手にしている短剣をオレに手渡す。
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