久遠の花〜 the story of blood~
/8
/8
目の前にある情報を処理するのに、オレの頭は時間を要した。
月は欠け、歪な形。降り注ぐ光は不思議な色を放ち、感覚を鈍らせていく。
美咲を中心とし、その周りに開く大きな花。高さは数メートル。飛び上がり引きはがそうとするも、美咲の体はしっかりと繋ぎとめられていた。
「美咲、美咲っ!」
呼びかけても反応は無い……。
体の周りは樹脂のようなもので覆われ、美咲の皮膚は硬化していた。
これだけでも頭が一杯なのに、更に困惑させたのが長の行動だ。花が咲くのを見届けると、高笑いを上げながら自らの首を切り裂いた。まだ血は流れているが、もう動く気配は無い。
「――――やられたか」
振り向けば、眉間にしわを寄せた蓮華さんが立っていた。
「下りて状況を説明しろ」
「でも美咲がっ」
「早くしろ」
有無を言わさぬ口調。これ以上拒めば命が無いと思えるほど、蓮華さんの雰囲気は違っていた。渋々下りれば、蓮華さんは胸の傷を手当てし始めた。
「出血が酷いな。――それで、この有様はどういうことだ」
「長がっ。日向さんの腹に、剣を刺した途端……」
「それでこうなったのか?」
頷けば、蓮華さんはまじまじと花を見つめる。
「――――遅かった」
嫌な言葉。淡々と、蓮華さんは続きを話す。
「体はここに在るが、魂が無い。――助けても、魂が無ければ肉体は維持出来ぬ」
胸の傷を塞ぐと、蓮華さんは手にしている短剣をオレに手渡す。
目の前にある情報を処理するのに、オレの頭は時間を要した。
月は欠け、歪な形。降り注ぐ光は不思議な色を放ち、感覚を鈍らせていく。
美咲を中心とし、その周りに開く大きな花。高さは数メートル。飛び上がり引きはがそうとするも、美咲の体はしっかりと繋ぎとめられていた。
「美咲、美咲っ!」
呼びかけても反応は無い……。
体の周りは樹脂のようなもので覆われ、美咲の皮膚は硬化していた。
これだけでも頭が一杯なのに、更に困惑させたのが長の行動だ。花が咲くのを見届けると、高笑いを上げながら自らの首を切り裂いた。まだ血は流れているが、もう動く気配は無い。
「――――やられたか」
振り向けば、眉間にしわを寄せた蓮華さんが立っていた。
「下りて状況を説明しろ」
「でも美咲がっ」
「早くしろ」
有無を言わさぬ口調。これ以上拒めば命が無いと思えるほど、蓮華さんの雰囲気は違っていた。渋々下りれば、蓮華さんは胸の傷を手当てし始めた。
「出血が酷いな。――それで、この有様はどういうことだ」
「長がっ。日向さんの腹に、剣を刺した途端……」
「それでこうなったのか?」
頷けば、蓮華さんはまじまじと花を見つめる。
「――――遅かった」
嫌な言葉。淡々と、蓮華さんは続きを話す。
「体はここに在るが、魂が無い。――助けても、魂が無ければ肉体は維持出来ぬ」
胸の傷を塞ぐと、蓮華さんは手にしている短剣をオレに手渡す。