久遠の花〜 the story of blood~
Epilogue
Epilogue


 なぜか、私は花畑にいた。

 白一面の花に、青く澄みきった空。

 確か、死んだらまずは花畑に行くって聞いたことがるけど、もしかしてここがそうなのかなぁ?――ずっと立っているのもなんだし、ちょっと歩いてみよう。


 草を踏みしめ、花の中を進んで行く。

 周りはとても穏やかで、私以外に誰かがいる気配は感じない。本当に死後の世界なんじゃないかって、そう思えてしまう。


 遠くに、人のカタチが見える。

 よかった。やっぱりここは普通の場所なんだ。

 近付いて行くと、そこにいたのは男の人。見た目からすると、私と同い年ぐらいじゃないかな。

 私に気付いたその人は、笑顔で私を見ている。会釈をすれば、その人は私のそばに駆け寄って来た。


〝――――〟


 なにか言ってるのに、その音が聞こえない。

 どうしたらいいかわからないでいると、その人はジェスチャーで、私に手を前に出してほしいと伝えてきた。


〝――――〟


 片手を出せば、そこに、一つの丸い物を置かれた。ビー玉のようなそれに入っていたのは、小さな青い花。思わず、見惚れるほど綺麗な色合いをしていた。


〝――――〟


 男の人は、また、ジェスチャーでなにかを伝えようとする。どうやら、これを握ってほしいみたい。

 しっかり握ると、その人はとても嬉しそうに笑っていた。その顔を見たら、なんだかこっちまで嬉しくて。私も笑っていると、自然と、その人の手が私に触れる。男の人は苦手だけど、この人には、そういうのを感じない。

 来てほしい場所があるのか、こっちだと手を引きながら、どこかに案内し始めた。

 とても穏やかだけど、なぜか、少し悲しい。お互い笑顔なのに、なんだか複雑な気持ちが芽生え始めていた。


 ――歩いている先に、小さな白いドアが見える。辿り着くと、男の人は、私にノブを回すようにと伝えた。

 でも……回す為には、手を離さなければいけない。当たり前のことなのに、私はなぜか、手を離すことができなかった。
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