久遠の花〜 the story of blood~
「着いて来い……とか?」
「ニャ~!」
頷く猫。本当に言葉がわかっているかのように、私の言葉に対して反応を示してくれている。
……でも、またなにかあったら。
数日前のことが、頭を過る。今一人でいるということが、私の中で警戒心を強めていった。
「――ニャ~」
尚も私を呼ぶ猫。でも、やっぱり着いていくのは――。
「――ごめんね。私、もう帰らないといけないから」
また今度ね、と言い、猫の頭を撫でる。
後ろ髪を引かれながら、私は猫と別れることにした。
途中振り返って見れば、猫は名残惜しそうに、ずっとこっちを見ている。
あんなに懐いてくれるんだったら……もうちょっと、遊んであげればよかったかなぁ。
そんなことを考えながら歩いていれば、空の色が、徐々に夜へ変わっていく。とても静かな時間が流れ、歩きながら沈む夕日を見ていた時、
「っ?!――ぁ、く」
突然、酷い痛みが頭に走る。発作でも起きたのかと思っていれば――目の前に、あの世界の景色が見えた。
赤い空に、青い月が輝く世界。
そこには、見知らぬ誰かがいる。
覚えなんてないのに、意志とは反して、その映像は流れ続けた。
『……、フロル』
『大丈夫。私は、……』
銀のように輝く、紅色をした髪の女性。
その隣には、長い黒髪の男性がいる。